「何でもない。それよりもうすぐ夕餉の時間だ。食堂に行っておこう。」



凛はそう言うと山崎の問いには答えずさっさと廊下を歩いていってしまった。



「何なんや?」



山崎は先程の凛の姿を思い出しながら凛の背中を見つめる。



「山崎くん?どうしたかね?」



声を掛けられ後ろを振り返るとそこには近藤の姿があった。



「局長・・・山内の様子がおかしいのですが・・・」



山崎がそう言うと近藤の表情はみるみる険しくなって行く。



「やはり・・・山崎くん、年が明けたら頼みたい仕事がある。吉田稔麿の情報を集めてくれ。」



「吉田ですか?」


「あぁ、凛くんがここへ来てもう二度も吉田の姿を目撃している。どうやら吉田は凛くんの命えを狙っている様だ。それに吉田に会った後、凛くんは錯乱状態を起こす。きっとあいつの顔を見ると嫌でも六年前の事を思い出してしまう。だから吉田を一刻も早く始末してしまわないと・・・。」



近藤はそう言ってはぁ・・・とため息をついた。




「分かりました。指示をいただければいつでも動きます。」



「あぁ、すまないね。」




近藤はそう言って食堂の方へ歩いていった。