「こ…婚約者だったんですよね?」


「ああ…。一年前まではな。俺の父さんと夏海の父さんが古い友人でさ…。それで色々とあって、付き合うことになった…。でも、もうアイツとは別れたから、婚約者でも彼女でもない…。」


先輩の腕を握る力が少し強くなる。



「それに今…、俺の瞳に…、心に映ってるのは、翠央だから。」


視線を真っ直ぐに飛ばされて、私はしばらく目を逸らせなかった。


そのまま…
夕日が微かな光へ変わるまで、私と先輩はその場に立ったままでいたんだ…。