「今、翠央が誰かを“好き”とかって聞こえてきたんだけど、どっ…どういうことなんだ!?」 私とお母さんはビックリしてリビングの入り口に目を向けると、お風呂から上がってきたお父さんが、困惑した表情で慌てて中に入ってきた。 えっ! お父さん……聞いてたの!? パジャマ姿のお父さんは、ソファーに腰をおろすと、コホン……とわざとらしく軽い咳払いをした。 「み……翠央?好きな人がいるのか…?」 真面目な表情だけど、言葉は少し上ずっていて、何だか無理してるのが私にも分かる…。