Anniversary


『そのバトン役を務めますのが、1年C組、小泉選手!』


 チーム紹介のついでにバトン役も紹介される、との説明は、前もって言ってあったハズなのだが……紹介された当の小泉は、高階の背中に張り付いたまま引き攣り笑顔を見せつつペコリと軽く一礼のみ。

 ――頼むから可愛らしく手ぐらい振ってやれよっつの。

 小泉も小泉で、わりと影ではモテている。

 やっぱ見た目は可愛いし性格も天真爛漫だしな。

 …が、いかんせん当の本人が「みっきー先輩ダイスキ!」をあからさまに公言して体現して憚らないモンだから、誰もあからさまに何も言えない上にアクションすら起こせない、っつーだけのことで。

 …しかも本人、極端にニブいしな呆れるくらい。

 だって考えてもみろって、彼女は現に自分の学校の生徒会長すら知らなかったよーな、そういう度の外れた大ボケなんだぞ?

(それにしても、いくら不本意とはいえ……こういう時くらいファンサービスしてやったって、バチは当たらんぞ小泉……?)

 ――まあ…そうしたらそうしたで、今度は当のカレシの方が黙ってないんだろうけどさ。

“当のカレシ”――つまり三樹本だが。

 ヤツはきっとヘーゼンとナニゴトでも無いよーなカオで、第5走者…つまりアンカーとしてスタンバっているに違いない。

 見なくても分かる、そんなのは。

 それでも……今日は1日、さっきの競技でも活躍したことだし、なにかと小泉に全校生徒の注目が集まっていて、絶対に内心ではヘーゼンとしてられていないに違いない。

 こうやって彼女が“バトン”として紹介されることすら、ヤツにとっちゃ気が気ではないんだろう本心では。

 一応これでも同じ天文部員として丸2年の付き合いだ。

 三樹本が場違いなくらいにナニゴトでも無いよーな表情をする時ほど、その内側でテンパってるってことを、俺はキッチリ知ってるからな。