そーやって、ふいに背後から響いてきた低くオドロオドロしい声にビックリしたのか、反射的に2人がバッと握り合っていた手を離す。
…ホントに束の間の幸せだったな早乙女。可哀想に。
しかも碓氷センセー、今日は〈体育祭〉という場所柄ゆえに全くもって煙草が吸えない、という状況にある所為なのか……はたまた、さきほどの“午前の部”最後の競技で食らった例の“吊るし上げられ”が尾を引いているのか……普段にも増して、あからさまに機嫌が悪いし。
そんな不機嫌さMAXな重低音の声で何の前触れも無くイキナリ言葉を投げつけられたら……そら、早乙女でなくともビックリするわな。
「あ、先生っ! さっき私が応援合戦に出てたの、ちゃんと見ててくれました? 学ランもどう? 似合う?」
しかも高階、センセーの顔を見るなり、すっげえ嬉しそうな表情になったかと思うと、そんなことまでニッコリ可愛く言ってくれちゃって。
…早乙女、さらに哀れ。
そこで、「はいはい、見てた見てた。ゴクロウサマ」と軽くあしらう碓氷センセーが、あしらいつつも、片手で高階のアタマをナデナデしてあげちゃったりなんか、して……むしろ、さっきの早乙女との雰囲気よりも“イイ雰囲気”醸し出していたりなんか、しちゃってて……。
――それを目の当たりにしてしまう早乙女が、ドコまでも哀れ。
そして不憫。
「学ランも、なかなかに似合うじゃねーか。…なんっか普段とは別人みたいだぞ?」
「ホントに!? 別人だった!? 先生がそう言ってくれるなら、頑張った甲斐があったなあっ♪」
「確かに、言うだけのことはあったよな。よく頑張った。お疲れさん」
「うわーい、先生に褒められちゃった~!」
――このほんわりした会話をジャマするのは、非っ常ーっっに! 気が引けるのだが。
てゆーか、ナゼにこんなにも普段以上にラブラブしてやがるんだコイツら?
やっぱ、さっきの《“借り人”競走》の影響か?
…と考えたら、その和やかな会話と笑顔のウラに何かそれぞれの含みがありそうで、そこはかとなくオソロシイが。

