Anniversary


 ハッと我に返って気付いてみると……それは“午前の部”最後の競技が、今まさに始まったという合図だった。

 …ようするにアレだ。

 例のイロモノ競技。――《WANTED! ~ミッション・イズ・『ウォーリーを探せ!』トライアル☆(“借り人”競走)》、まずは女子の回。

『さあ、各コース一斉にスタートを切りました!』

 放送席から、放送部のアナウンサーがこの調子でルール説明だの何だのサンザン喋っていたのを、何となく聞いてはいたハズだったが……どうやらコイツら3人のことをどーにかしようとしていたあまり、耳で聞いてはアタマの向こう側でそのまま流してしまっていたらしい。

(――てか、すっかり忘れてた……!)

 思い出したようにグラウンドの向こうを見やると、――順番を待つ走者の列の中に、問題の小泉の姿が。

「わかったか平良? このレースに於いて、断固として我々は小泉と三樹本との接触は防がなければならんのだ!」

「よって小泉が走り終わるまで、このまま三樹本は隠しておかねば!」

「聞き分けろ平良! ひとえに天文部のためだ」

「…って、だーから何なんですかソレは!?」

 そこでついに早乙女がキレた。

 ワケもわからないまま田所にガッチリ両手を拘束され、しかも自力じゃどうもがいても解けないものだから、次第にイライラしてきたらしい。

「さっきから聞いてれば『天文部のため』とか『天文部存続の危機』だとか……そこに何で三樹本先輩と小泉とが絡んでくるのかは知りませんがっ……そぉんなことよりも、まず目先の応援合戦の方が大事でしょうがっっ!!?」

「甘い! それは生クリームにアンコまぶしてメープルシロップふりかけたくらいに甘いぞ早乙女!!」

 …『甘い』っつーより、ソレむしろキモチワルイし。

「オマエは、この競技の真のオソロシサを知らんから、そんなことが言えるのだ……!」

 …確かに『真のオソロシサ』という点では、『生クリームにアンコまぶしてメープルシロップふりかけた』くらいのキモチワルサは、あるかもな。

 しかし何も知らない早乙女は、「『真のオソロシサ』? はあ!?」と、“なに言ってんだコイツ!?”くらいの表情で一刀両断。