「それに、桃花の出るその《“借り人”競走》って、プログラムでいうと“午前の部”の最後やろ? ――その時間なんて、ちょうど俺ら応援合戦の準備で、ノンビリ観戦してるドコロでもないやろうし」
…言われてみたら、その通りだ。
応援合戦はその競技が終了した直後、昼休憩の間に催される。
加えて、その後には《部活動対抗障害物リレー》までもがキッチリ控えているということもあり、余計にノンビリしてるドコロでもないだろう。
…つーか、そう考えたら昼メシ食う時間すら、ありゃしねーじゃんか俺ら。
黙ったまま何も言えなくなった俺に向かい……ニコニコと穏やかな笑みを浮かべたまま、やっぱり普段と変わらぬ穏やかな口調で、三樹本は告げた。
「ま、そういうことやし。…てーことを他の先輩らーにも伝えといてクダサイな」
そして、「ほな、そろそろ手合わせ願いますー」と、両手を合わせて一礼した。
―――ごく稀にだが……ひょっとしたら三樹本の方が、あのウチの部の3人組よりも本当は強いんじゃないかと……そう思えてしまう時がある。
普段その強かさを笑顔の下に隠している分、常日頃から何ら隠さず自然体に強かでいるアイツらよりも、更に腹黒レベルは強力なんじゃなかろうか、と……。
『三樹本のこと……あまり甘く見ない方がいいと思うわよ?』
先刻、ヤツら3人を部室から叩き出した、その去り際に。
ふいに『平良先輩』と、俺を呼び止めて言った梨田サンの言葉。
――てゆーか彼女、いつからドアの外に立ってて一体ドコから何を聞いていたのか。そっちの方がむしろ気にかかるが。
『一方的に「コッチが利用してる」なんて、考えない方がいいかもね。間違ってもアイツは素直に唯々諾々と利用されてくれるヤツじゃないし。…転んでもタダじゃ起きないタイプよ?』
『…梨田さん、仲いいの三樹本と?』
『冗談じゃないわ。別に嫌いではないけど、出来ることなら関わりたくはないわね。…味方でいるウチはいいけど、敵に回ったら厄介だもの』
――いずこでも、考えてることは同じようなモンだということか。
まあ、確かに聞いたことないしな三樹本からも。
梨田と仲良くしてるような話なんて。
仲が悪いという話も聞かないけれど。

