「すいません、異議を申し立てるワケでは無いんですが……」
…と、そこで控えめにおっとりと口を挟んだのは高階。
「先輩のお話によると、『走者はバトンを絶対に地面に落とすことは赦されない』っていうことでしたけど……つまり、走りながら桃花を抱えて、尚且つ『絶対に地面に落とすことは赦されない』っていうワケでしょう? ――私も、確かに身長は160㎝くらいはあるし、女子にしては大柄な方なのかもしれませんけど……でも、さすがに桃花1人を抱えて走れるだけの腕力までは無いんですが……」
サスガあの小泉の面倒を常に見てあげられるだけあって、彼女だけはムダに冷静。
とはいえ、その落ち着いた静かな声に、“オンナの私に何やらせる気なんじゃいコノヤロウ!”というソラ恐ろしい無言の圧力が感じられるのは……俺だけだろうか?
「ああ、確かに。そう考えるのは尤もだ。…でも、そこらへんは問題ナシ! そんなの、女子しかいないような部活には最初から不利になるのが目に見えてることだしな。基本的に『バトンを抱えて走らなくてはならない』のは男子生徒のみ、ってルール上で決まってるから、走者が女子の場合はバトン役の人間と手を繋いで走るだけでOK。…ただし手を放したら即、“バトンを地面に落とした”ことと同等としてみなされてしまうけど」
「それでも……私よりも、他の男子部員の方にやってもらった方が……」
「そうしたいのはヤマヤマなんだけど……でも冷静に考えてみると、男がヒト1人抱えて走るよりも、オンナノコがバトンの手を引いて走る方が、走るだけなら絶対に速いに決まってんだよな。それに障害の中には、バトンが小泉なら、やっぱ高階に走者をやってもらわなきゃならないよーなモノもあって……」
「―――って、ちょっと待ちなさいよ!! ヒトを無視して勝手に話を進めないでちょうだいっ!!」
「そうですよ!! 勝手にヒトの参加を決めないでくださいよ!!」
そこで連続砲火の如く、とうとう小泉と早乙女の異論反論に火が点いた。

