「つまり今年のリレーのバトンは“人間”なんだよ。よって走者は、人間1人を抱えてトラック5分の1を走り、なおかつ障害も突破しなきゃならん、つーワケだ。その代わりバトンには誰を選出してもOK。ただし、その部内に所属する人間に限る。…てなワケで小泉、ウチのバトンはイチバンちまいオマエに決定!」
「なっ……!!?」
ただでさえ“小さい”と言われることに過剰なまでの否定反応を見せる小泉のことである。
俺の言い方が、よっぽど腹に据えかねたのか……咄嗟に言葉が出てこないらしく、顔を真っ赤にして、まるで金魚のように口をパクパクさせている。
「オイ待て吉原! ――走者は5人で小泉がバトン、ってことは……オマエ、顧問の俺まで走らせる気か!?」
その隙を逃すものかとばかりに、そこで慌てたように口を差し入れてきたのが碓氷センセー。
体育祭のことなんて、“顧問”である自分だけは蚊帳の外、とでも考えていたんだろうが……そうはいくか。
「始めにちゃんと言ったでしょうがセンセー? 『ココに居るメンバーは全員《部活動対抗障害物リレー》の参加メンバーに決定』だ、って」
「さっき言ってた『頼み』ってコレか!? ――ふざけんなよテメエ!! そんなもんに教師を持ち出すな! 部員だけで賄え!」
「部員だけじゃ賄いきれないから頼んでんでしょーが。…ここに居る人間以外の部員に、いくらバトンが小泉でも、ヒト1人運んで走れるヤツが居るかっつーの」
――ぶっちゃけ……後のメンツに出来そうなヤツらはホトンド幽霊部員であるばかりか、男とはいえヒョロヒョロの典型的文系人間ばかりで……いささか心もとない連中揃いなのだ。
その点、身長185㎝の碓氷センセーなら、ガタイじゃ俺と同等だし。それなりに力もあるし。
ここで使わないテは無いだろう。

