「そんなモン……所詮、運動部には勝てないに決まってるじゃない! なんでワザワザ文化部まで参加しなくちゃなんないワケー?」
そこで可愛らしい声で不満げな口を挟んだのは小泉。
ちなみに彼女は自他ともに認める運動オンチ。
…の割にはくるくると良く動き回っている典型的キャピキャピ系。
「甘いぞ小泉! そこは企画側もちゃんと考えてあって、だから《部活動対抗“障害物”リレー》なんだよ」
「は……?」
「だから、ただ競争するだけじゃー運動部に有利、っつーのは目に見えているワケだから、一概に速さだけじゃ何ともし難い“障害物リレー”ってカタチを取っているんだよ。…加えて、“障害物リレー”だからこそ、毎年趣向を変えてルールも変わる」
「…で? 今年のルールは何なん? どう変わったん?」
間髪入れずに投げ付けられた三樹本の問いに、「つまり、だ…」と、そこで近くに在ったホワイトボードを持ち出してきて、俺は図を書いて説明してゆく。
「まず走者は5人。校庭のトラック1周を5分割して、それぞれの区間の真ん中あたりに障害を置く。走者が各々に与えられた障害をクリアしつつ次の走者へとバトンを繋いでゆく、というリレー形式。…と、そこまでは例年通りだが。――今年からの変更点、まず1つがバトンだ!」
パンッと、そこですかさず胸ポケットから取り出した指示棒をビッと伸ばして、「注目!」と、俺はホワイトボードの一点をひっぱたいた。
「5ヶ所用意されている障害を突破しながらトラックを1周するのに、走者はバトンを絶対に地面に落とすことは赦されない。ゆえに走者はバトンを抱えたまま、この5つの障害を突破しなくてはならない。…というと普通の障害物走に比べて何の変哲も無いが、とーころがどっこい!」
そしてビシッと、俺は手にした指示棒を今度はホワイトボードとは逆方向に向けて突きつけた。
――小泉の鼻先に。
「ウチのバトンはオマエだ、小泉!」
「――はいぃッ……!?」
小泉が目を丸くして俺を見上げる。まるで“何を言われたのかが分かりません!”って表情で。
…そうだろうとも。
俺だって、部長会議でそれを聞かされた時は、そっくり同じ表情をしたもんだってマジで。

