「…まあまあ、早乙女っち。そんな怒りなさんな」
早乙女の怒りっぷりとは打って変わって、いつもと同じく、相変わらずの関西弁イントネーションで、穏やかに微笑んで三樹本は応える。
「ええやんか、そのくらい。別に減るモンじゃなし」
「減らなくても、確実に面倒くさいじゃないですか!」
「ええ若いモンが、『面倒くさい』とか言うたらアカンよー?」
「単に先輩方から『面倒』を押し付けられているだけという事実に、『面倒くさい』と言って何が悪いんです!?」
「…あんなぁ、早乙女っち? ――何だかんだ言うたかて結局、オレら後輩は、この先輩らーには、どーっしても逆らえんように、出来てるんやで? いい加減、入部して半年以上も経ってんねんから、学習せんと」
「…………っ!!」
――サスガ三樹本。ダテにこの部で俺らの後輩を早乙女よりも1年長くやってきてるだけあって、良ーく分かってる。
シミジミと淡々と哀愁まで漂わせた口調でもって、この小生意気な早乙女を黙らせるとは……大した男だ。
――さては俺らが可愛がり過ぎたか……?
「そもそも、こんなもんを吉原先輩が自ら買って出るワケないやろー? 絶対、“あの”先輩方がウラで糸引いてるに決まってるやん。考えてもやりぃ、その点、いわば吉原先輩かて“被害者”や」
「…………」
――って、何で既にそこまでバレバレなんですかい……なんて男だ、三樹本慎之介……!
つーか何だかそもそも俺、後輩に哀れまれてる……?

