病院に着くとはじめ君は放心状態のあたしの腕を引き、
病院の奥の部屋に案内した。
「…ここです。」
はじめ君に案内されたこの部屋には昔1度だけ入った覚えがある。
微かな記憶の中、ずっと入院していたおばあちゃんが亡くなって、入った部屋だった。
冷たい部屋の真ん中のベットの上に
洋介が眠っていた。
洋介はいつもみたいに笑いもせず、静かに横になっていた。
「…兄貴は愛梨さんを送った後、バイクで事故に…」
はじめ君は…
泣いていた。
あたしは呆然とする事しかできなかった。
でもすぐに涙が頬を伝って流れた。
冷たくなった洋介の体にしがみついて泣いた。
「…よぉすけ…。なんで…こんなに…キレイなの…に。」
「…兄貴が死んだのは頭を強く打ったからだって…」
どうして
洋介が忘れ物をしたと言った時、止めなかったのか
どうして
あたしも行くと言わなかったのか
あたしが付いて行ってれば
洋介を1人にしていなければ
こんな事にはならなかったかもしれないのに。
洋介は
何も言わず
あたしの前から姿を消して
永遠という
長い
永い
眠りについた。