6月のある日。

授業が始まってすぐに洋介からメールが届いた。

「今日放課後部活出るから先に帰ってて。」

そんな事言われても…歩いて帰ったら30分はかかるのに…。

「洋介が終わるまで待ってる。」

あたしは洋介にメールを送った。

授業が終わり休み時間になると直也があたしの所に来た。
そして他愛もない話をするのが日課。

「ねぇ、直也今日洋介部活出るんだって~。珍しいよね。」

直也と洋介は同じバレー部で仲が良かった。

直也の表情が少し変わったのがわかった。

いきなりあたしの腕を掴んで人があまり来ない廊下まで引っ張って行かれた。

「直也…何?腕痛いよ!」

直也はさっき話していた時とは全然違う顔だった。

「ごめん。愛梨が洋介の事ばっかり話すから…。」

直也は下を向いてそう言った。

「直也…洋介はあたしにとって家族と同じなの…」

直也は何も言わずにキスをしてきた。

「直也っ…!」

「俺は愛梨が1番好きだよ。家族よりも、友達よりも。」

直也はそう言って教室に戻って行った。


あたしは授業なんて受ける気になれなくて保健室のベットでずっと横になっていた。


あんな直也初めて見た。
あたしは直也の事は好きだけど洋介の事も同じ位大切なの…


色々考えている内にいつの間にか放課後になっていた。


あたしは洋介が部活を終わるのを待つため誰もいない教室にいた。



洋介早く来ないかな。

怖いし
寂しい…



しばらくすると扉を開ける音がした。


「直也…」

直也はしょんぼりしながらあたしの隣りに来た。

「今日はごめんね。」

「あたしこそ…ごめんね。」


直也は何も悪くないのに…


「…直也。」

「何?」


「…あたし、洋介と関わらないようにするよ…。」

直也は無言であたしを抱き締めてキスをした。

あたしは直也が好きだから…

これで良いんだよね?

幸せになれるんだよね?

あたしは部活に戻る直也の後ろ姿を見ながら思った。