涙を拭い、柏原の方を見ると、ゆっくりと足を進めて私の横に並び、優しい笑顔で頷いてくれた。
私もそれに応えるように
『大丈夫。』
の想いを込めて、コクリと頷く。
強い瞳で前に向き直ると、父親は覚悟を決めたように、再び受け身の姿勢でその場に立った。
震える拳に力を込めた時、父親の左薬指でキラリと光るリングが目に入り、思わず固まってしまった。
初めてみる形のリングは、新しい家族が出来た事を意味している。
「その指輪・・・。」
私の問いかけに父は、申し訳なさそうにはにかむと、遠慮がちに口を開いた。
「結婚したんだ・・・、3年前に。」
「そう・・・、だったんだ。子供は?」
「女の子が一人。もうすぐ2歳になる。」
「そう・・・。」
少しの動揺と怒りの他に、何故かホッとしている自分がいた。
今までの私なら、自分だけ幸せになっている事に、怒りを抑えられなかったと思う。
でも、今は・・・。
柏原がいてくれるから・・・。
