不意打ちを食らった父は、よろけて地面に倒れ込む。
「立ちなさいよ!こんなの、私とお母さんの痛みに比べたら、どうって事無いんだから!」
感情が溢れ出すように、零れそうになる涙を、ぐっと堪えて父を睨んだ。
口許からしたたる血を拭い、覚悟を決めたかのように、私の前に真っ直ぐ立つ。
―優しい笑みを浮かべて。
その顔を見た瞬間、堪えていたものが堰を切って溢れ出した。
変わってしまう前の、楽しかった頃の思い出が、走馬灯のように駆け巡ったから。
初めて自転車に乗れた時の事、毎年ケーキを囲んだ誕生日、ママと私が同時に寝込んだ時、看病してくれたのはパパだったっけ・・・。
溢れ出す涙を見て、私に触れようか迷う父の手が、宙を彷徨う。
―その時だった。
「サラ!」
後ろで聞こえた柏原の、私を呼ぶ声には
『頑張れ!』
の想いがこもっていて、それだけで不思議と力が湧いてきた。
