家までの一時間、一人で歩くと長い道のりも、

柏原と二人、他愛無い話をしながら歩く一時間は、あっと言う間で、気付くと家の前に着いていた。


「お前、ひょっとして、ここに住んでるのか?」


お化け屋敷さながらの、うちのオンボロアパートを見て、柏原が目を丸くして驚いている。


「ボロくて悪かったわね。じゃ、本屋はこの道を真っすぐ行った、右側だから。」


「えっ?あ、ああ、本屋か。」


こいつ・・・、本屋に行く設定、忘れてやがる。


「ぷっ、あははは。」


可笑しくて、声を上げて笑った。


「てめぇ、俺様の許可なく、笑うな。」


「ごめんってば。送ってくれて、ありがとね。じゃ。」


理不尽に怒る柏原を背に、階段を駆け上った。


「おいっ!」


下から叫ぶ柏原の声に、体を向ける。


「俺様の言う事を聞くって約束、忘れんなよ!」


そう言って柏原は、本屋とは逆方向の、今来た道を帰って行った。


私、約束なんか、しましたっけ!?




この日は、良からぬ事を企む柏原の顔が頭から離れなくて、

眠りについたのは、空が明るくなってからだった。


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