学校の帰り道。

私はひとり歩いていた。

重たい足をのっしりと。

重たい体をのっそりと。

辺り一面の田んぼ。

それをぬうように敷かれた細い道。

となりには誰もいなくて。
今日もこのまま、家までひとり。

でも途中に友達が1人いるから。

きょうもまた会いにいこう。


田んぼの真ん中にある大きな杉の木。

地元では天木(てんぼく)さんと呼ばれている。

その先の小さな小道を真っ直ぐ。

しばらく歩いた突き当たり。

そこには小さな、小さな手芸屋さん。

名前は「アマラント」。

お客さんは少ないみたいだけど、地元に愛されている手芸屋さん。

そこに私の友達はいた。


お店に入ってずっと奥。

ロッジ風の建物。

真新しい商品の横を過ぎ去って。

年季の入った商品の奥。

私のおともだち。

「うれのこり」の棚の真ん中に。

ひとりでたたずむ、淡い桃色のぶたさん。ちなみにキーホルダー。
名前は「ブータス」。

思いつきの名前で申し訳ないけれど。

不器用な私にはこれが精一杯。

「ブータス。元気だった?」

話かける私。

「大丈夫だよ、このは」

なんて言ってみる私。

でもきっとブータスもそう思ってるはず。

よく私は不思議ちゃんって言われるけど、

あながち間違っていないと思う。

このお店の商品はよく売れる。

少しくらいうれのこりはでても、お店のご主人の娘さんがもらっていく。

そんな中のうれのこりブータス。

私がもらっていきたいけど、棚には持ち出し禁止の貼り紙。

貰い手がいないブータスに自分を重ねてみたりして。
今日もブータスに「似た者同士だね」なんて呟いてみる。