六畳一間の魔法使い

「別に恋愛小説を馬鹿にしとる訳じゃない」

急に真面目な顔になって、彼は私の方を見た。

「恋愛小説書いとる奴だって、上手い奴はたくさんおるし、唸るような作品も結構ある。恋愛小説じゃけぇって、頭っから否定しとる訳じゃないんよ、俺は」

「でも自分では恋愛小説書かないよね?」

私がそう言うと。

「当たり前じゃっ!」

彼は拳を握り締めて立ち上がった。

「恋愛作家の皆さんをリスペクトしつつ、俺は自分の書きたいジャンル…冒険やSFで恋愛ジャンルを打倒するゆーて決めたんじゃっ!そしてこのサイトで天下とって、ゆくゆくは書籍化して、映画化とかして…!」

また始まった。

大口だけは一年前とちっとも変わらない。

壁薄いんだから、あんまりこのアパートで大声出さないで欲しい。