「あなた…っ」
お母さんがお父さんの腕を掴んで、何かを言っていた。
でもあたしの頭には何も入ってこなくて。
あたしの頭は
さっきのお父さんの言葉を
静かに、かつ確実に、響かせていた。
…そうだよね。
お姉ちゃんじゃなくて、あたしが死ねばよかったんだ。
あたしが…
あたし、が…っ
「…っ…」
「亜莉栖(アリス)…!?」
お母さんの制止の言葉も聞かずに、あたしは走って家を飛び出した。
ただあそこにいたくなくて。
どこでもいいから
あたしがいていい場所をみつけたくて。
雨の降る道を走った。
ねぇ、
あたしが間違ってたの?
またお父さんたちに笑ってほしいって思ったあたしが間違ってたのかなぁ?
ねぇ、
あれは本当の気持ち?
あたしが死ねばってそう思ったの?
「あぁぁぁぁぁあぁぁあ!!!!」
叫んだって何も分からないけど、叫ばずにいられなかった。
ただ、あたしにはお父さんの言葉が重たすぎて。
少しでも軽くなるように、と涙をたくさん流すしかできなくて。

