*** ヒュウ、と優しく爽やかな風があたしを撫でてく。 梓に連れてこられたのは病院のすぐ隣の公園。 近いだけあってたくさんの患者さんらしき人がいた。 公園の横には大きな川が流れてて、その川にも夕日の光が差していた。 少し、肌寒く感じる。 …まるであの日の海みたい。 梓とあたしは公園のベンチに腰を降ろした。 静かに流れる川のように時間がゆっくり過ぎて行く。 「有香」 いきなり名前を呼ばれて慌てて梓を見る。 「ごめん、黙ってて…」 悲しそうな横顔があたしの心を締め付ける。