「でも母を失って憎んだ父を
こっちに来て
うちがいろんなこと経験してきたら
なんだかいろんなことが
見えてきたんです。
見ようとしたのかな……
父が母を心から愛してたこと
父がいつも母に申し訳ないと
自分を責めて暮らしていること…
どうして母が父をあんなに
大事にしてたのか……
わかるような気がしてきました。」



「おまえのかあさんが
息子のとこに来てるみたいだぞ。」


「聞きました。
きっと私より父のほうが
心配なんだと思います。
父は自分を責めて生きているから。
『しっかりしなさい』そう言って
父を叱るらしいです。」

私は涙をふいた。


ババコがハンカチをかしてくれた。


驚いて顔をあげると
父によく似た笑顔のババコがいた。



「息子は、昔から心臓が悪くて
運動もふつうの生活にも不自由で
本ばかり読んで、モヤシのような子だったわ。
来地をモヤシにしたみたい。」


ババコが父を語りだした。