あの日、あの場所、あの時間に起こった出来事は今でも頭から離れなかった。
誰もが、こんなことが起こるだなんて全く予想していなかった。


確かに私は、まだ子供だった。何にも動けなかったんだ。何にも考えられなかったんだ。



「何にもできなかったんだ。」



夢だと思いたかった。けど、そこには現実しかなかった。ひたすら泣くけど、泣いた時点で何かが変わることもなく、そのまま時が過ぎていった。



・・・―そう。私が13歳の頃だった。


父親と母親が二人で旅行に行って、家に一人ぼっち。お兄ちゃんとお姉ちゃん、二人いたけどどちらもデート。


「はーあ。暇だなぁ。」


テレビのチャンネルを見ては飽きて変えて、見ては飽きて変えて・・・そんな繰り返しをしてた時だった。


キッチンから煙の匂いが漂う。


「え?!」
びっくりしてキッチンに走れば、そこには火が飛び散っていた。


「なんで?!火・・・消してたはずなのに!」
あまりにも火が激しく私は焦った。水をかけるにも、火はだんだんと強くなるばかり。


「どおすればいいのっ・・・?!」
私は全速力で外に出る。息を切らしながら我が家を眺め泣いた。

あっという間に我が家は火で包まれていった。

「わ、私・・・なんにも知らない・・・。」
ただただ泣くだけだった。


しばらく泣いていたら、消防車がやってきて消防士さんが私に尋ねてきた。

「大丈夫ですか?!!お怪我等はありませんか?!」
必死に問い続ける消防士さん。その質問にもまともに答えられなく、消防士さんもそのまま家に駆け込んでいった。


やがて、我が家から火は消えた。だが、我が家ごと消えてしまった。





何にも動けなかった。何にも考えられなかった。



「何にもできなかった。」