始業のベルが鳴り、これからの授業内容など学校生活に関する説明が始まった。翔は、しっかり聞かなければと思いながらも気がつくとあの人を探して、目で追っていた。一通りの説明が終わった後、各クラスの担任・副担任の紹介が行われた。

「H組副担任の田中 美月です。」

初めて聞く、少し緊張したあの人の声は翔の想像したとおりかわいらしい声だった。

「田中先生は他にもいらっしゃいますので、皆さん美月先生って呼んでくださいね。」

司会進行をしていた年配の先生がそう言った。

(美月先生・・・)心の中で翔は何度もつぶやいた。苗字ではなく名前で呼べる。ただそれだけのことが翔には嬉しかった。