Ground...01


※Breath...03~04あたり



蒼乃の事を好きだと気付いたのは、俺が理不尽な勝負を持ちかけた後だった。

時折見せる寂しそうな表情や、それとは逆に何事にも揺るがない綺麗な瞳を真っすぐに向けたり。

どうしてか、俺が傍にいなくちゃって気持ちを駆り立てた。





* * *



勝負を終えて寮に帰ると(元水泳部にはちょっと罪悪感)、同室の梅沢こと梅が俺を見るなり凄い剣幕で近寄って来た。



「え、ちょ、梅?」



驚いて数歩後ろに下がるが、詰め寄るようにして迫ってくる梅。

温厚な梅がこう言う態度に出たのが初めてだったので、俺は心底驚いていた。

そして更に、



「バンビ君!」



今まで出した事もない大声を出され、肩を震わせてしまった。



「今日の勝負のこと聞いた!」

「あ、え、ああ」

「勘違いだよ! バンビ君の全部勘違い!」



鼻息も荒く、俺はどうしたらいいのか分からず、怒鳴る梅を見つめる。

だけど、次の言葉を聞いた瞬間、体の芯がどっしりと重くなり、背中から血の気が全て引いて行くのを感じたんだ。