犬吠峠

その頃からだったかな。

何だか視線を感じたんだ。

こんな山奥だ、俺達以外誰もいる筈がない。

なのに誰かに見られているような気がする。

一人や二人じゃない。

あっちこっちから隠れて見られてるような気がする。

…気のせいか、衣擦れや、何か引き摺るような音もした気がしてな。

誰ともなく、いつの間にか足早に車の所まで戻っていたよ。

そしたら…。

ボロボロだったんだ…車が。