「すみません、先生。ちょっと賊を追いかけていたものですから」

と天使様。


「ゾク?」


いぶかしげな視線を向ける先生。

『賊』なんて、どんな言葉のチョイスしてんだよ。



「コイツの部屋に賊が侵入して、硫酸ぶちまけていったのです。私が部屋に入ったら窓から逃げたんです。で、追いかけました」

「おい、おまえらの部屋は2階だろ?」

「ええ、でも逃げたんです。事実です」


天使様押しきるつもりだ。


遠山先生はしばらく考え込んだ後。


「このところ、学園内で不審な事件が起こっているからな。あながちウソってわけでもないんだろう」


納得したらしい。


「だけど、おまえらは生徒で、しかも他校から交換学生として来たんだ!! 怪我とかしたら大変な身なんだぞ。こういうことは自分たちで解決しようと思うな。そう言う時のための教師なんだから!!」



あれ?

怒るポイントそこなんすか?


もっとこう。


『窓割りやがってこのやろう』とか。
『ベッドや床どうしてくれんだ、このやろう』とか。


そういうことじゃないんすか?