「ガブリエルの話の線から考えれば、一人はあの男、遠山義範。だが……不審な行動と気配からは遠山琴音と黒田ミク。あいつの性質を考えれば、ガブリエルの言う『男説』を否定してみないとならない」
えっとですね。
つまり。
悪魔将軍は『男』っつーよりも『女』のほうが濃ゆいんですかね?
「なるほどねー。ガブの推測も当てになんねーな。ま、一番信じられるのは、その場にいたおまえらってことだし。普段からはなんにも感じないのか?」
ウリエル様の言葉にミカエル様は顎に手を添えて「確証がない」と言った。
「決定打がない。臭いはするが、それが誰のところのものか分からない。今日一日、琴音といたが、不自然なところは何一つない。まぁ、アレがトイレに行った時はさすがにわからないがな」
「トイレ?」
「トランス状態のときに傍にいられれば、悪魔祓いでもなんでもして引きずり出してやるが、傍で強い気配を感じないことには、降臨した我々では対処ができない。結局はおまえが頼りなのに、水の中の邪鬼どもに引きずり込まれるし」
邪鬼?
「なじみの言葉で言うなら怨霊とか、悪霊とかかな。水場はそういうのがとりつきやすいんだよな。今まではほら、じーちゃんズが生前没後も守ってくれてたからよかったけどな。少年ももっと自覚持って。少年の魂ってヤツらからしたらもうめっちゃ御馳走なんだからな」
ウリエル様がそう言ってオレの頭をグリグリした。
そういや、オレ河とか水場で一人になったこと、小さいときから一度もなかったな。
じーちゃんたちがいたか。
兄貴がいたか。
どっちにしても。
すげー守られてたんだな。