やがて、あっけに取られている私に向かい、二人は「ラーラ、ごめんなさい」「ラーラ、ありがとう」と言いながらゆっくりと空に上って行くのです。
私は二人に向かってありったけの大きな声で鳴きながら「私も一緒に連れて行って」と幾度も幾度も空に向かって鳴きましたが、やがて二人は光と共に遠ざかり見えなくなりました。
私は戸惑いつつ傍らを見ると、いないはずの裕次郎さんがいるのです。でも身体は動きません。私はどうして良いか分からず、ただむなしく寄り添い耳元で甘える様に泣くだけでした。
朝になるとビルの作業員の方が来て裕次郎さんに声を掛けてから周りが急に騒がしくなりました。
色々な車やたくさんの人様が私達を取り囲んでいました。そして私は裕次郎さんと引き離されて別々の車に乗せられて行きました。
いつのまにか私は大きな建物の中に連れていかれました。そして、たくさんの人様のいる部屋で暖かいストーブの前に座らされて食べ物をいただきました。私はそれどころではなく裕次郎さんの事が気になり食べる事は出来ませんでした。
おびえている私を色々な人様が代わる代わる優しく撫でては声を掛けてもらいましたが、あの日ほど心細い思いをした事はありませんでした。
次の日には悦子さんのお父さんが裕次郎さんを迎えに来られました。
すぐに私の所へも来て下さいました。そしてすぐさま私を見つけると優しく抱きしめ「ラーラ、ありがとう、よく頑張ったね」と泣きながら言ってもらいました。
私もこれからどうなるのかと、とても不安に思っていたのでお父さんに抱かれながら鳴いて鳴いていっぱい泣きました。そして間もなく私は愛する裕次郎さんは逝かれた事を悟りました。

