「お…かーさん?」 リビングの中は真っ暗で、 ソファーに座っている 母が目に飛び込んだ。 「どうしたの、電気もつけないで」 電気のスイッチをつけ、 ただならぬ空気が ただよう部屋へ 足をふみいれた。 「ね、あとちょっとで夏休みだよね」 私の声に母がやっと 顔をあげた。 「…そうね」 「旅行、いこうね」 「…そうね」 「…どうしたの?」 元気のない母。 「なんでもないわ。さぁ、ご飯作らなくちゃ」 いつもの笑顔で母は 立ち上がり、 キッチンへ向かった。