俺と紅葉は、ほとんどがこんな感じだ。
顔を合わせれば喧嘩になるし
口を開けば言い合いになる。
でも、紅葉自身を嫌いな訳ではない。
むしろイイ奴だと思う。
人が喜ぶ事が好きで
明るくて、みんなの人気者で。
正直、俺たちのクラスが仲いいのは紅葉のおかげだと思ってる。
…まぁ、本人には口が裂けても言ってやんねぇけど。
そう思ってるはず、…なのに。
どうしてか、アイツを前にすると俺は自分の感情が剥き出しになってしまうのだ。
アイツはあんな性格だし、俺もこんなんだし。
仕方ないっちゃあ仕方ねぇんだけど、やっぱり気分は悪い訳で。
この苛立ちを沈める為にも、とにかく早く帰りたかった。
すると待ち切れずに横断歩道を渡り始めた俺に、樹の叫ぶような声が背中に聞こえた。
「颯っ、信号…っ!!!」
「―――え?」
―――ドンッ!
そこから先の記憶はない。
ただ、投げ出された体の衝撃と視界の端に映る、トラックの残像。
そして、紅葉の声。
“颯―――!”
それだけが、ただ
鮮明に、脳裏にこびりついていた。

