こうなると、紅葉のご機嫌はなかなか直らない。


「紅葉、」

「………。」

「紅葉ちゃーん?」

「………。」

「くーれーはー。」



はて、どうしたモンか。


そっぽ向いてこっちを見ようともしない紅葉に、うーんと首を捻らせる。



…あ、そーだ!

しばらく考えた後
パッと電球が光るごとく、いい事を思いついた俺は紅葉にバレないよう行動に出た。


そして―――。





「トリック オア トリート!」

「……え?」


ようやくこっちを見てくれた紅葉へ、俺はビンいっぱいの飴を差し出す。


「今日、ハロウィンだろ?」

だからやる、そう言った俺に紅葉はちょっと嬉しそうな顔で、でもまだ拗ねたような声で呟いた。



「その言葉は、お菓子をもらう人が言う言葉なんだけど。」

「…あ、」

「これじゃ、あたしがあげなくちゃいけないじゃない。」



…そう、そうでした。


ドンマイ、俺!