――おかしい。
何かが、おかしい。
それとも、おかしいのは俺?
じゃあ、あれはマジで夢なのか?
そんな訳……、
その時、ふと思い出す。
轢かれる瞬間、俺を呼んだ声。
“颯―――!”
…そうだ。
あの場面を、紅葉も見ていたはず。アイツなら、俺が轢かれたのを証明してくれるかもしれない。
俺は勢いよく教室を見渡して紅葉の姿を探す。
だけど、アイツの姿は見当たらない。
いつもは教室のどこに居てもアイツの声が聞こえるのに…。
だから俺は再び樹に向き直って尋ねる。
「アイツは!?」
「アイツって誰だよ。」
「だから、紅葉だって!」
「…クレハ?」
「あん時、紅葉も近くに居たんだよ!」
そう言った俺に向かって
樹は何言ってんだ、と言わんばかりに顔を歪めて言った。
「……お前、頭ヤバいんじゃない?」
「はっ!?」
そして次に
樹の口から落とされた言葉が
最初に感じた違和感を、確かなモノにしたんだ。
「―――紅葉って誰だよ。」

