7番ボックス席は、何時しか修二の指定席となった。

その日、何事もなく修二は飲んでいた。

月子がトイレに立った。

席では、修二と絵理子が話している。

その時…カトレアで古株のベテランホステス、美咲が、呼ばれもしないのに、席にやって来た。

と、修二の横にそっと座った。

胸の谷間がやけに強調されたドレスに身を包み、甘い香りを放ちながら…… 。

美咲のワインレッドの唇が…修二の耳許に近付いていく。

妖しい…怪しい…。


「ずっと遠くから見ていたの。美咲って呼んで…ヘルプでいいから、私もたまには、お席に呼んでよ…これ…」

と、携帯番号書かれた名刺を、修二の上着ポケットに忍ばせた。

修二は無表情…冷めた目で美咲に視線を移した。

美咲が、ニッコリ…笑顔を作る。

トイレから出て来た月子……目の中に映った、修二と美咲の密着した光景が……。

足がその場に釘付けになり…ビクとも動かない。

後ろから歩いて来た客とぶつかり、我に帰った月子。

またトイレにUターンし、中から鍵を閉めた。