再び、兄が月子を見上げた。

「龍子…兄ちゃんはな、嫁と子供をこれからもずっと守っていかなきゃならない。お前とは、この世でたった二人の兄妹だけど、ヤクザの嫁になる妹とは、付き合いが出来ない。それも仕方ない事だ、分かるだろ?龍子?」

「分かっているわ、お兄ちゃん…本当に、本当にごめん…許してね、うぅぅ~…」

咽び泣きじゃくる月子、兄は立ち上がりしっかりと抱き締めた。

「お前も、これからは母さんと同じ道行くんだな…龍子、同じ道でも、お前は…お前は…母さんより幸せになってくれなきゃ……あの男と何とか頑張って、どうしても、どうしても駄目だったら…兄ちゃんとこに、いつでも帰ってこい……」

兄は涙を飲み、月子を理解しようと努力した。

「うぅ…お兄ちゃん」

月子は、兄にしがみつき泣いた。

これが最後に離れて行く妹に、兄も泣いた。

同じ環境で…同じ核心抱き…同じ道を歩いてきた二人……今、道は二つに別れた。