原田家通夜当日…喪服で身を包んだ兄妹が式場に現れた。

月子の目に…原田の写真が……ついさっきまで生きていた様に思う、この人が…もう息してないなんて…月子には信じられなかった。

お父さん…あの箱の中にいるの…狭い箱に押し込められて……。

私のせいでこんな目に、私が殺した、私が…私が…私は殺人者。


とその時…病院で見た、あの女が近付いて来た。

原田の妻だった。

「何の用だ?何しに来た?」

月子は、土間である地面に土下座した。

「申し訳ございませんでした。謝っても謝っても済むべき問題でない事は分かっています。どうか、お線香だけでもあげさせて頂けないでしょうか」

兄も無言のまま、月子の横で土下座した。

「すみませんでした」

妻のいきなり取った行動は、あの日と同じ、月子の髪の毛を掴み、引きずり回した。

「帰れ~お前なんかに線香あげさせてたまるかっ!この人殺しが~」

兄が止めに入った。

「許してやって下さい~」

兄以外、他に止める者は誰一人としていない。

地面に叩きつけられた月子、その上に兄が庇うように重なった。

足袋の履いた足で、何度も何度も蹴られる兄。

二人は無抵抗で……。