修二が後ろから囁く。

「月子~昔、二人で海に行った事覚えてるか?」

修二に抱きしめられながら、月子は昔を思い出す。

「忘れた事ないわ」

「お互いに…体隠してさ…嘘付き合ってたんだよな…」

「うん……」

「でもさ…もう昔とは違うんだ…もうお互い裸になったんだ。もう一度、海に行こう、月子…あの日に戻って…あの日からやり直さないか?」

「修二さん…でもね、私……」

「店も何もかも全部…捨てたらいい。後始末は俺がする。船で行くんだ。週に一便しかないフェリーさ。現地着くまでに、乗り換えで3日ぐらいはかかるらしい。誰にも足がつかない為にね…… そこでさ、これからの事話そうよ…あさって、有明埠頭で朝、8時に待ってるよ。 時間に月子がいなかったら、俺は一人で行く」

遅すぎた新婚旅行……月子の気持ちは…今、大きく揺れていた。

行きたい…行きたい…行きたい…修二さんと…全て捨てて…あなたに走りたい…。

修二さんを愛しているの……。