二人の気持ちに反する様に…秒針は確実に一秒一秒未来へと動く。

月子が服を着始めた時、修二が聞いた。

「月子、帰るのか?」

着替えながら、月子は哀しい目で修二を見る。

「修二さん、ありがとう……」

「月子、ここに居ろよ、ずっと…帰るなよ……」

月子は、原田の存在を修二には話していなかった。

が……月子の影には男が居て、何か訳ありな事…修二は察知していた。

それが決して幸せな状況でない事も…予想していた。

ここで月子を帰したら、もう二度と会えなくなる…悪い予感が修二の胸を過った。

「修二さん、本当にありがとう…私ね…その言葉だけで、これから生きていけるわ…」

月子の胸に住む、原田と店の存在は大きな面積を占めていた。

はっきり言って、この先どうしていいかわからない月子だったが…このまま修二宅に居続ける事は不可能な話……。

ゆっくりと…身だしなみ整えていたら…修二がベッドから出て来て、月子を後ろからギュッと抱きしめた。

「月子、あさってさ…ここを出るんだ、親っさんの別荘…誰も知らない秘密の場所さ…沖縄のまだ南、日本の最南端…波照間島ってとこ知ってるか? 」

「……知らない…」