原田は月子をじっと見据える。

と…じわじわと、黄色い眼が潤んできた。

  と、いきなり!

  ガチャーン!

テーブル上の料理やグラスなどを、思い切りの力で払いのけた。

グラスや皿は割れ、2時間かけて作った料理が5分で残飯に…。

と目の血走った原田が月子に近づいていく。

あっ…もう殺されるかも知れない…月子はワナワナ震え、驚愕している。

と原田は月子の前まで来て、座り込み膝にしがみついた。

「月子~何処にも行かないでくれよ、俺の側から…離れないでくれ…別れるなんて言わないでくれよ…」

月子の足元に跪き、バーコード頭が子供に戻って…泣きじゃくる。

晩酌2本を楽しみに、真面目に真面目に生きてきた原田…夜の蝶一匹で……ここまで哀れな姿に成りうる。

「お父さん、やめてよ…もう泣かないでよ…」

月子も椅子から降りて、原田を抱きしめた。

「月子、お前に捨てられたら、俺はもう生きてはいけない。死んだ方がましだ。何でも言う事は聞く、何でもする、月子のしたいようにすればいい、だから、別れるなんて言わないでくれよ、月子~」

月子も泣いた……。

二人は、種類の違う涙を流す。