ボーイが、酒の支度を持って来た。

「俺さ…俺のね、正体ばれた時…月子…びっくりしたよな?驚いたろ?」

「えぇ…もうびっくりした…テレビに新聞に、修二さんの顔出るし、マスコミの人達、店とか部屋に来るから、何がどうなったのか、何が起きたのか、もう頭が混乱しちゃってパニックちゃって……それより、もう二度と会えないって……もう修二さんは死んだ人なんだって、自分に言い聞かして生きてきたの…暫くは…立ち直れなかったけど……」

「ごめんよ…騙すつもりはなかった…ただ…月子がさ、ヤクザは嫌いだって言ったから、つい言いそびれてね、嫌われたくなかったんだよ、言うに言えなくなったって訳さ」

「修二さん…あの当時、色々苦しんでたのよね、私にはいつも笑ってくれてたけど…」

「組みでも問題は色々あったさ、でも全部自分が蒔いた種だし、自分が刈り取った…それだけの事だよ。でもな、俺は…俺はね…月子に振られた事が一番痛かった…今更言う事じゃないよな?」

「修二さん…私ね…私…振った訳ではないの…どうしても…付き合えない訳が…訳があったの…」

月子の瞳は曇った。

修二がぼやけて見える。