月子はそれから夜の世界を転々とし、印刷会社の代表、原田と知り合った。

代表と言っても、家族だけで経営している小さな会社の王様。

歳は60前、若い時分から仕事一本できた原田は、遊びと言う遊びは殆んど知らなかった。

家での晩酌ビール2本が、その男の唯一の楽しみ。

そんな慎ましやかな生活は、印刷関係の企業が下火になった今でも、かなりの蓄えを持っていた。

ある時、仕事関係の仲間にクラブに連れて行かれ、そこで月子と知り合った。

その時、月子はホステス歴5年のベテランになっていた。

皮膚病の方は、少し湿疹が残っているものの、当時の10分の1ぐらいまで良くなっていて、軽いアトピーと言っても過言ではないくらい、もう殆んど、女の部分に支障をきたすものではなかった。


原田の席についた月子は、惜しみ無く自分をアピールした。

ベテランホステス曰く、ついた新規の客は何が何でも自分の物にする。

女に免疫なかった原田は、月子に一目惚れした。

月子の優しさを商売とは取らず、真実の心として受け止め、連日連夜のクラブ通いが始まった。

原田の狂気じみた恋は…最早、妻にも子供にも止められなかった。