稲田組若頭銃殺事件は、七年前、テレビや新聞、週刊誌など、マスコミを大いに賑わした。

修二が、仲田総合病院の息子である事も、刺青含めた過去の経歴も全国一斉に、明るみに出てしまった。

その時、この世で一番、天地が逆さまになるくらい驚いた女、月子。

警察に事情調書として何度も呼び出しを受けるや、本人、月子は全く何も知らなかった。

男と女の関係など一切なかった…などと誰が信じよう…。

月子は、もうカトレアでは働けずに、事件以来直ぐに辞めた。

月子は、暫く…兄夫婦に守られて生きる事になった。


修二さん…私がヤクザを毛嫌いしていたから、言えなかったのね。

体に入れ墨持ってたなんて…父と同じ。

だからなの?

なかなか口説かなかった訳は?

もとは大きな病院の息子……何があったの、あなたに?

何があなたをそうさせたの?

普通は医者として、同じ道歩むべきレール、何で、よりによってヤクザの世界なんかに……。

きっと、何か訳があったのよね。