兄が聞く。

「その男って、店の客なのか?」

「うん…」

「その男に騙されたのか?」

「違う、違うのよ、騙すとか騙さないとか、そんな事じゃないのよ。まだ付き合ってもない、何にもないの…何にもない事が辛いのよ…私に凄く尽くしてくれたし、私もね、死ぬほど好きなんだけど………私…こんな体だから…付き合う事が出来ない…お兄ちゃん……私、どうしていいのかわからない…」

月子は泣きながら、苦しみの全てを打ち明けた。

が…兄に言ったところで…解決出来る訳もなく…苦悩与えるだけだと…月子は知っていた。

「龍子、望んで病気になった訳じゃないんだ。どんなに嘆いたって、今の体の状態は直ぐに変わらない。いいか?兄ちゃんの言う事よく聞け…でもな、心の行く先はいつでも自分で変える事は出来る。何も伝えずに終わるより、その男に全て話してしまえ、その方がいいと兄ちゃんは思うぞ。その男がどう受け止めるかは、後の問題だ。このままでは、その人も訳がわからないままだ…今頃、振られたと思ってるよ。何なら、兄ちゃんが会おうか?」

その男がまさかヤクザだったとは……。


月子、兄を泣かすなよ……。