「出ていけ~今すぐ出ていけ!」

父親は声を大にした。

修二はまだすがる、訴える、泣いている。

「親父…親父…頼むよ…」

その時、ドアがノックされた。

   コンコン

白衣の兄が入って来た。

久し振りの兄弟の再会だった。

兄貴…修二は涙の溜まった瞳で見上げる。

兄は、眼鏡の奥から凍り付くような視線で、修二を見下ろした。

同じ親から生まれながら、道は二つに分かれ…今では全く違う世界で生きる兄と弟。

二人の間に、心の繋がりなどは欠片もなかった。


 最早、これまでか…。

修二は立ち上がり、無言のまま病院を後にした。