大山が低い声で話し出す。

「あの稲田のボンクラ…意気がりやがって、これから先、あいつがおったら、ここら周辺その内に牛耳ってしまいよる。あの若頭さえ消えてくれたら、稲田組の末は屁みたいなもんや…どや? 別に誰に頼んでもええねんで、やりたい若いもんはいっぱいおるからの……修二よ、五つかたまか…どっちか選べや、二者択一や…男やったらケジメとらんかい…」

「親っさん…どっちか決めたら、俺は自由なんですね」

修二の声は震えていた。

「そうや、堅気になってもええし…考え変わって、組に残るんやったら格上げや、若頭になって、行く行くは俺の跡目や」


己れの心臓の音で、修二の鼓膜は今にも破れそうだった。

「…わかりました、親っさん…」

長い土下座から立ち上がった修二に、大山が付け加える。

「殺る時はヘマしたらあかんぞ、誰が殺ったか、何処の組のもんに殺られたか分からんようにせえよ、下手打ったら、お前も臭い飯食わなあかんし、わしにかて迷惑かかる。 わしやったら……そんな危ない橋渡るより、親に泣き付く方選ぶけどな…」

大山はニヤリと気味の悪い笑みを浮かべた。