誕生日当日、修二は久しぶりにカトレアに入って来た。

スタンドの花や、胡蝶蘭の鉢植えがいくらか届いていた。

ボーイに案内されるがまま着いた席は…いつもの席ではなかった。

暗黙の7番ボックスには、既に3人の客が座っていた。

ボーイが水割りの支度を持って来る。

その後ろから顔を覗かしたのは…月子…ではなく絵理子だった。

「修二さん、お久しぶりです。えっ? この事、修二さん来てくれる事、月子知ってる?」

「いや…連絡してないよ」

「そうなの…月子ね、今日はちょっと遅れてるみたい、もうすぐ来るから私で我慢してね」

月子…誰かと同伴か?
無理もない…これだけ放っておいたんだ、あいつにも仕事があって当然さ。

「いらっしゃいませ」

お客が来る度、修二は玄関先が気になった。
暫くして……

「いらっしゃいませ」

月子が来た…初老の痩せた背の低い男と共に……。

月子は修二を見つけた。

修二は月子を見つけた。