そのあと。
教室に戻ると、秋が戻っていた。頭に氷を乗せていた。
意外なことに、小羽も戻っていた。
顔を真っ赤にして、ぷい、とそっぽを向いていた。
『…転校生ちゃんと、秋君は…なんか、怪しいねっ!』
なごみの心の隅には、実月の言葉が小さい針のように、刺さったままだ。
***
壇上では、校長先生のスピーチがまだ続いている。
切れかかった蛍光灯が、ちかちかと点滅し、校長の頭をちかちかと照らしている。
禿げた頭に良い感じだ…。
そんな風に呑気にスピーチを聞き流しているのは、氷の入った袋を頭に乗せた秋だった。
その後ろの後ろ。
終業式は、並び順が適当だった。
…全く、秋は…
ばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかば…
呪いの言葉の様にぶつぶつと呟いているのは、猫のように髪を逆立てて、顔を赤くして、スピーチを聞き流す小羽だった。
隣の生徒が、顔を真っ青にしておびえているのにも全然気づいてなかった。
つい先日会ったばかりなのに、秋にずいぶんとご執心だ。
