水曜日。珈琲の入れ方は一応一通りマスターした（味はまだまだ未熟だが）翔は、今日から紅茶の入れ方を習おうと意気込んで秘密基地へと向かったが、店のドアを開けると美砂が駆け寄ってきた。

「ねぇショウタくんは知ってたの？」
急な問いかけに驚いて無言で美砂を見つめる翔に美砂は
「ショウタくんは知ってたの？？」
もう一度同じ質問を投げかけた。
「あの、美砂さん。いったい何の事ですか？」
状況が把握できずにとりあえず美砂をなだめるように問い返した。
「まぁまぁ、美砂落ち着いて。」
カウンター席から二人のやりとりを見ていた藤堂は美砂をたしなめてから翔にとりあえず座るようにとカウンター席を差した。
「昨日ニュースを見ていたらたまたまワイドショーをしていてね。私も美砂もあまり芸能人には詳しくないのだが、ワイドショーで失踪していた歌手が発見されたと報道されていたんだ。」
「あっ、それ僕も見ました。」
「それでね、その歌手の写真を見た美砂が“あれはリョクくんじゃないか？”とね。」
「…えっ？」
話の内容を理解するのに数分を要した気がした。