宮地岳線

健太はついに我慢出来なくなって教室を出た。
そして階段の踊場まで“退避”すると、壁に寄りかかってふぅーっと息をついた。
(アイツのシモ系のハナシは聴いてるとマジでキモくて腹が立ってくんだよな…)
岡島が「Sガク」と口にするたび毎にまるで“あの人”が汚されていくようで、健太はそれが耐えられなかった。
確かにSガクにもいるさ、岡島みたいなのにフラフラっとなる女がさ。俺だって天神で見かけたことがあるるよ。
「でも…」
“あの人”はそうじゃない。
あんな澱んだ連中とは別だ。
違う世界の人さ。そうだとも。
そうだとも…。

冬休み。
正月一日、家族で近所の宮地嶽神社へ初詣に訪れた時のこと。
混み合う参道で参拝の順番待ちをしている健太の耳に、どこからかこんな会話が聞こえてきた。
「しかしなぁ、今年の春で宮地岳線が廃止になると、来年の初詣の時がちっと困るなぁ…」
「オイオイ、まだ今年のお詣りも済ませていないうちから…」
えっ…!
健太は我が耳を疑った。
あの宮地岳線が、今年の春でなくなる…?
毎日通学に利用しているのに、そんなこと初耳だ。
と、言うことは…。
“あの人”に逢えなくなるってこと…。
「マジかよ…」