宮地岳線

その白光の小径を辿りながら松林を抜けると、視界がパッと開け、健太の目に漆黒の玄界灘が飛び込んできた。
足元の白光はそのまま砂浜へ扇状に広がり、一面は瞬く間に光りの絨毯を敷き詰めたようになった。
「わぁ…」
息をのんで立ち尽くす健太に、彼女は優しい瞳で微笑みかける。
二人は波打ち際へと、光りの絨毯をゆっくり進む。
すると白光の絨毯は更に海の底へと広がり、それまで漆黒だった玄界灘はその白光をうけて透き通ったブルーへと変化し、生き生きと輝く波はザーッとはじける音をたてて二人の足元に打ち寄せては引いていく。
潮風が健太の髪を、彼女のポニーテールを、浴衣の裾や袂を、たおやかに靡かせる。
そして沖から聞こえてくるゴーッという低い唸りに、健太は地球の“声”を聴いたような気がした。

やがて地鳴りのような音と共に、西の空で次々と大輪の花が咲き乱れた。
「あ、始まったね」
うん、と彼女は頷いて、満月の夜空に咲いては散り、散っては咲く数多の花々を見上げた。
「綺麗だなぁ…」
「そうだね…」
そんな若い二人の姿を、真円の月は優しく照らし出す。