今はっきりと言えることは、健太のあの時の行動は、決して無駄ではなかった、ということ。
“新宮行き、間もなく発車いたします”
とのホームのアナウンスがあってドアが閉まり、電車は走り出した。ポイントを通過し、車体が大きく揺れる。
あっ、と一瞬よろける彼女、あぶない、と素早く立ち上がって彼女の両肩を抑える健太。肩の感触と温もりにドキっとして、慌てて手を離す。
「あ、ごめん…」
「いえ、そんな…」
二人の瞳(め)がお互いの姿を映す。そして視線が交わると、二人はハッとして下を向いた。
彼女のポニーテールがさらさらと揺れ、髪の美しい香りがあたりに仄かに漂う。
そのまま二人は、並んでシートに座った。
すこしだけ離れて。
「毎朝、同じ車両に乗っていましたよね…?」
暫しの無言の後、健太は口を開いた。
「ええ。七時四十分の電車…。あの、あなたはどこから乗ってたんですか?」
「宮地岳」
「ああ…。春に廃止になった」
「そう。だから香椎までが不便になっちゃって…」
「そうなんですか。それで…」
“新宮行き、間もなく発車いたします”
とのホームのアナウンスがあってドアが閉まり、電車は走り出した。ポイントを通過し、車体が大きく揺れる。
あっ、と一瞬よろける彼女、あぶない、と素早く立ち上がって彼女の両肩を抑える健太。肩の感触と温もりにドキっとして、慌てて手を離す。
「あ、ごめん…」
「いえ、そんな…」
二人の瞳(め)がお互いの姿を映す。そして視線が交わると、二人はハッとして下を向いた。
彼女のポニーテールがさらさらと揺れ、髪の美しい香りがあたりに仄かに漂う。
そのまま二人は、並んでシートに座った。
すこしだけ離れて。
「毎朝、同じ車両に乗っていましたよね…?」
暫しの無言の後、健太は口を開いた。
「ええ。七時四十分の電車…。あの、あなたはどこから乗ってたんですか?」
「宮地岳」
「ああ…。春に廃止になった」
「そう。だから香椎までが不便になっちゃって…」
「そうなんですか。それで…」



